研究概要 |
1.免疫グロブリン遺伝子の検索: リンパ腫の免疫グロブリン遺伝子再構成の解析にPCR法を導入することはより迅速に効率よく結果を得る上で重要と思われる。しかし実際にはprimerにconsensus配列を用いるためannealing温度を低くする必要があり、したがって非特異的増幅がしばしばみられるなど多くの困難を伴う。本年度はこの点の改善に関する研究をおこなった。このためまず電気泳動法にて標的DNA(構成DNA)分画およびその前後の分画を分離し、それぞれに対しPCR増幅、クロン化、塩基配列決定する方法を取った。次にクローンの頻度をそれぞれの分画で比較すれば特異的クローンの選別が極めて容易であることが判明した。この際primerのconsensus配列が3′末端を含めて腫瘍DNAでは必ずしも保たれていないことが判明し、この点は特に留意すべきと思われた。以上の手順により我々はリンパ腫組織および培養リンパ腫の再構成遺伝子を正確に決定し得た。一部の例ではRT-PCR法にてmRNA配列と同一配列であることも確認した。それぞれのリンパ腫に特異的な免疫グロブリン遺伝子の再構成配列を迅速かつ正確に決定する手法を確立したことから今後のリンパ腫の研究の飛躍的に進展が可能と思われた。 2.がん抑制遺伝子の検索: 脳リンパ腫のがん抑制遺伝子解析の報告はないか少ない。しかしがん抑制遺伝子変異を解析することはこの腫瘍のがん化構序の理解に重要と思う。同時に、脳リンパ腫に異なる変異があればそれは免疫グロブリン遺伝子同様に腫瘍の識別の指標となりうる。本年度は5例の脳リンパ腫を対象にp53,p16,p15,p21がん抑制遺伝子変異の解析をおこない、p53遺伝子変異は2例に、p16,p15遺伝子変異は4例に認めた。p21遺伝子変異は認められなかった。一方、各種脳腫瘍の遺伝子変異の検索も並行しておこないリンパ腫のそれとの比較検討をおこないつつ腫瘍ごとの変異のパターンを明確にした。
|