骨形成因子の合成とその臨床応用のための基礎的研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03404045
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 高岡 邦夫 大阪大学, 医学部, 助教授 (30112048)
• 研究分担者: 松井 稔 大阪大学, 医学部, 助手 (20238950) ; 吉川 秀樹 大阪大学, 医学部, 助手 (60191558) ; 小野 啓郎 大阪大学, 医学部, 教授 (70028330)
• キーワード: 骨形成因子 / 合成ポリマ- / 人工骨

研究概要

1.骨形成因子の生化学的研究:マウス骨肉腫から、骨形成因子を精製した。この精製タンパクは分子量32Kの中性タンパク質であった。この標品と担体(コラ-ゲン)を混合してマウスの筋肉内に埋植すると再現性よく異所性骨形成が起こった。この標品を酵素で切断し、断片を得て、そのアミノ酸部分配列を決定した。その情報をもとにマウス骨肉腫のmーRNAから得たcーDNAライブラリ-から、骨形成因子の遺伝子を単離した。この遺伝子の解析から、骨形成因子の全アミノ酸配列の決定を行なった。その配列は、ウシの骨基質から精製された骨形成因子の一つ(BMP4)と類似性を有していた。すなわち骨形成因子は、TGFーβファミリ-に属するタンパク質であり、2量体を形成して生物活性を発現することが明らかになった。この遺伝子をCHO細胞を用いて発現させたところ、その培養上清に骨形成因子が分泌されていることを確認した。すなわち、骨形成因子の生合成が可能であることが確認できた。
2.骨形成因子を用いた複合生体材料の開発:骨形成因子だけの筋肉内埋植では、拡散によって局所に留まらないために、骨形成因子を起こすことは出来ない。そのため、適当な担体を用いて骨形成因子を局所に留める必要がある。すなわちdelivery systemが必要である。したがって適当な担体の開発が必須である。我々は、合成ポリマ-であるポリ乳酸をこの担体として用いるための基礎的研究を行なった。種々の分子量ポリ乳酸と骨形成因子を混合して動物の筋肉内に埋植し、骨形成の有無を検索した。その結果、分子量650のポリ乳酸が、骨形成因子の担体として適していることが明らかとなった。しかし、このポリ乳酸は、やや炎症を起こす傾向があったため、更に改良を加えた。すなわち、ポリ乳酸にポリエチレングリコ-ルを縮合させて結合させた。これに骨形成因子を混合して、動物に埋植すると再現性よく異所性骨形成を起こすことが出来た。

研究成果

• [文献書誌] M.Yabu,K.takaoka,J.Hashimoto,H.Fujita: "Ultramicroscopic Aspects of the Conversion of Fibroblasts to Condrocytes in the Mouse Dorsal Subfascia Induced by Bone Morphogentic Protein(BMP)." Arch.Histol.Cytol.54. 95-102 (1991)
• [文献書誌] K.Takaoka,S.Miyamoto,H.Yoshikawa,K.Ono: "A Challenge to Osteointegrable Tumor Prosthesis." Limb SalvageーMajor Reconstructions in Oncologic and Nontumoral Conditions. F.Langlais,B.Tomeno(Eds.). 311-317 (1991)
• [文献書誌] S.Miyamoto,K.Takaoka,T.Okada,H.Yoshikawa,J.Hashimoto,S.Suzuki,K.Ono: "Evaluation of polylactic acid homopolymers as carriers for bone morphogenetic protein." Clinical Orthopaedics and Related Research. 277.
• [文献書誌] S.Miyamoto,K.Takaoka,T.Okada,H.Yoshikawa,J.Hashimoto,S.Suzuki,K.Ono: "A new biodegradable synthetic carrier for bone morphogenetic proteinーpolylactic acidーpolythylene glycol block copolymerー" Clinical Orthopaedics and Related Research.
• [文献書誌] J.Hashimoto,K.Takaoka,H.Yoshikawa,S.Miyamoto,S.Suzuki,K.Ono: "Preservation of ectopically induced bone in the mouse by estradiol." Bone. 12. 249-255 (1991)
• [文献書誌] K.Takaoka,H.Nakahara,H.Yoshikawa,J.Hashimoto,S.Miyamoto,S.Suzuki,K.Ono: "Constitution of boneーinducing implants by combining bone morphogenetic protein(BMP)with biomaterials.ーexperimental studies in mice.ー" In Surgical Use of Bone Grafts and Bone Sudstitutes.(ed)Urist M.R.Butter Worth Heinemann.
• [文献書誌] K.Takaoka,M.Korezuka,K.Ono: "Telopeptideーdepleted bovine skin collagen as carrier for bone morphogenetic protein." Journal of Orthopaedic Research. 9. 902-907 (1991)
• [文献書誌] 高岡 邦夫,吉川 秀樹,橋本 淳,宮本 紳平,鈴木 省之: "骨形成因子の特性と応用" 骨代謝調節因子ー最近の進歩(別冊). 91-110 (1991)
• [文献書誌] 高岡 邦夫: "人工股関節集中討議" ライフサイエンス出版, 4 (1991)
• [文献書誌] 高岡 邦夫,吉川 秀樹,橋本 淳,宮本 紳平,鈴木 省之: "骨代謝調節因子ー最近の進歩" 羊土社, 20 (1991)
• [文献書誌] 吉川 秀樹,高岡 邦夫: "口腔インプラント学・上巻" 医歯薬出版, 9 (1991)