研究概要 |
1)骨形成因子(Bone morphogenetic protein,BMP)の精製 マウスDunn骨肉腫(BMP産生骨肉腫)から生化学的手法で、BMPの精製に成功した。 精製したBMPの生化学的特性を明らかにした。 BMPは分子量32Kの2量体を形成した糖タンパク質であった。 2)骨形成因子の遺伝子の単離とアミノ酸配列の決定 精製したBMPの断片のアミノ酸配列を決定し、その情報をもとに、オリゴヌクレオチドプローブを合成して、Dunn骨肉腫のDNAライブラリーから、BMPのc-DNAを単離して、そのアミノ酸の全配列を決定した。 3)遺伝子組みかえによる骨形成因子の合成 単離し増巾して得たc-DNAを発現ベクターに組み込んで、CHO細胞に導入して、遺伝子を発現させることで、BMPの合成を行なった。 4)骨形成因子の生物活性発現のための担体の開発 微量の骨形成因子を生体内で有効に発現させて、局所的に骨形成を誘導発現するためには、適当な担体が必要である。この担体は、埋植されるため、BMPによる骨誘導活性を阻害しないものであり、かつ、一定期間内に生体に吸収される特性が要求される。この条件を満足させるものとして2種類の担体(ブタ皮膚から抽出精製し、さらに種特異抗原性を除いたコラーゲンおよびポリ乳酸/ポリエチレングリコール酸共重合体)を開発した。 5)高等哺乳類(霊長類、ヒト)での骨形成因子の生物活性発現 高等哺乳類では、BMPの生物活性の発現が極めて弱いことが知られていたため、この種の動物でもBMPが有効に作用するためのBMPのdelivery systemの開発を行なつた。BMPを担体と複合させ、さらに多孔性の生体材料と複合させることが重要であることを発見した。 6)骨形成因子の生理的役割 骨折修復課程でのBMPの発現状態を明らかにした。BMPは骨折修復の初期にのみ骨折部近くの組織で産生が高なり、骨折治癒に重要な役割があるとを明らかにした。
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