最初に、ラット褐色細胞腫モデルの作成を試みた。10-12週歳のNew England DeaconnessHospitalラット(雄)の肩甲骨間にラット褐色細胞腫細胞(PC-12)を0.5×10^6個接種したところ、接種3〜4週目から生着した腫瘍が触知でき、4週で尿中カテコラミン排泄量の増加が認められ、特にノルエピネフリン、ドーパミンとその代謝産物の増加した。5〜6週から血圧・脈拍の上昇が認められ、動物モデルの作成に成功した。そこでこの動物モデルを用いて、α遮断薬であるプラゾシンとCa拮抗剤であるニフェジピンを投与し、その降圧効果及びカテコラミン代謝への影響について検討した。ラットを第1群:対照群、第2群:接種群(未治療群)、第3群:接種群(プラゾシン投与群)、第4群:接種群(ニフェジピン投与群)の4群に分類し、接種群にはPC-12を接種し、第3、4群には接種4週目から降圧剤投与を開始した。8週目には3、4群で同程度の降圧効果は認められたが対照群と同程度までは低下しなかった。また尿中カテコラミン排泄量は接種群間で差異は無かった。細胞接種8週目に全ラットを屠殺し、腫瘍及び心、腎を摘出して生化学的、組織学的検討を行ったところ、腫瘍内カテコラミン濃度は降圧剤投与群で低い傾向がみられたが有意ではなく、電顕像でも細胞内カテコラミン顆粒の数や大きさに差異は認められなかった。また、心・腎における高血圧性変化についても明らかな違いは認められなかった。ラット褐色細胞腫モデルにおいて、プラゾシン、ニフェジピンはそれぞれ降圧効果を認めるが十分ではなく、カテコラミン代謝に対する影響はないと思われた。
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