イオン選択性ガラス微小電極法による虚血網膜の病態生理学的研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03404051
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 本田 孔士 京都大学, 医学部, 教授 (90026930)
• 研究分担者: 山本 文昭 京都大学, 医学部, 助手 (60191441) ; 吉村 長久 京都大学, 医学部, 講師 (70211662) ; 千原 悦夫 京都大学, 医学部, 助教授 (20111958)
• キーワード: 虚血 / 水素イオン / カリウムイオン / ネコ網膜 / 色素上皮細胞

研究概要

in vivo猫網膜に眼圧上昇法にて虚血を負荷し、硝子体内電極および網膜内に刺入したイオン選択性ガラス微小電極により眼常存電位、硝子体網膜電図(ERG)、網膜内電位およびイオン濃度変化を記録した。虚血による組織障害については、再灌流による障害も以前より指摘されているところである。そこで、比較的短い時間の虚血を負荷し、虚血中および再灌流直後の変化に注目して実験を行なった。10分から60分の虚血において、眼常存電位はいずれも、眼圧上昇直後に軽く下降後上昇し、その後、徐々に下降した。再灌流直後には急激な上昇ではじまるpostーischemia oscillationを生じた。眼圧上昇後早期の眼常存電位の変化は低酸素における変化と類似がみられた。網膜内記録では、slow PIII、TEPcーwave、intraretinal bーwave、Vionの全てにおいて低下がみられ、特にこれまでよく報告されている硝子体ERGでほぼ振幅が回復した後も、内層でのこれらの電位の低下が続いていることが観察された。また、網膜下腔pHは虚血により低下し、細胞外K^+濃度は増加した。再灌流直後にはK^+濃度は急激に低下し、光誘発性反応が一時的に増大した。これより視細胞のNa^+ーK^+ポンプの機能が回復後一時的にかなり活発になっていることが示唆された。10分の虚血負荷では変化は可逆的で回復もはやいため、現在30分の虚血において、他の組織でも虚血ー再灌流障害を軽減することが報告されているcatalase、superoxide dismutase等を用い、回復過程の変化を観察している。

研究成果

• [文献書誌] Yoshihito Honda,Fumiaki Yamamoto,Atsushi Takeuch: "Effects ofsodium iodate on〔H^+〕_0 outside rod photoreceptors in cat." Investigative Pphthalmology 8 Visnal Science(Supple.). 32. 837 (1991)
• [文献書誌] Fumiaki Yamamoto,Yoshihito Honda: "Effects of iodoacetate on〔H^+〕_0 outside rod photoreceptors in cat." 21th Annual Meeting.Society for Neuroscience Absttacts. 17(1). 297 (1991)
• [文献書誌] 坂上 欧,桐生 純一,竹内 篤,山本 文昭,本田 孔士: "エンドセリンの網膜血管に対する作用。" 日本眼科学会雑誌. 96. (1992)
• [文献書誌] Fumiaki Yamamoto,Kano Hiroi,Hiroko Aikawa,Yoshihito Honda: "Effects of retinal ischemiaーreperfusion on pH outside rod photoreceptors in Cats." Inveshgative Ophthalmology 8 Visual Science(Suppl.). 33. (1992)
• [文献書誌] Kano Hiroi,Fumiaki Yamamoto,Hiroko Aikawa,Yoshihito Honda: "Electrophysiological analysis of retinal pigment epthelium function during ischemiaーreperfusion by intraretinal K^+ーmicroclectrodes in cat." Investigative.Ophthalmology 8 Visual Science(Suppl.). 33. (1992)
• [文献書誌] 山本 文昭,桐生 純一,竹内 篤,坂上 欧,本田 孔士: "猫網膜におけるイオン選択性ガラス微小電極法" 日本眼科紀要. 42. 1406-1413 (1991)