研究概要 |
虚血-再灌流時の網膜の病態を全身麻酔下の猫において、電気生理学的に検討した。従来の網膜全層から得られる網膜電図に加え、微小電極による網膜内記録を行い,さらに網膜内におけるイオンの動態も観察した。再灌流時の変化を検討するには虚血作成法としては、眼圧上昇法が最も容易で、かつ確実な再灌流が得られた。 10〜30分間の虚血で網膜電図をみると、再灌流6時間後まで回復傾向が続いて認められたが、30分虚血では完全回復には至らなかった。 再灌流障害の機序として考えられているフリーラジカルの影響を調べるため、スカベンジャーであるSOD及びカタラーゼを静脈内投与し、再灌流後の回復経過を比較した。再灌流早期には両者とも非投与群に比べ有意に大きな電位の回復を示したが、6時間後には有意差は認めず,このモデルでは面スカベンジャーの有効性は示せなかった。 網膜の障害がどのレベルで生じているかをみるため,微小電極を網膜各層において電位変化を記録したが,いずれの深度においても、全層網膜電図とほぼ同様の傾向を示した。 脈絡膜循環をもと絶させるため、外層の視細胞や網膜色素上皮にも大きな影響が認められた。 光刺激誘発性の細胞外pH変化は再灌流後長期にわたって反応が低下しており、視細胞の解糖呼吸系エネルギー代謝の抑制が示された。また、カリウムイオン濃変化も減少しており、視細胞の細胞膜のイオンチャンネルやポンプの機能が抑制されていることも示唆された。
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