研究概要 |
平成3年度から平成5年度までの研究で分泌型IgAの構成成分のひとつであるJoining chainの産生が肝臓ではIgMの産生に先行していることが分かり,Joining chainの機能がImmunoglobulinのpolymer化ではないかも知れないという可能性が考えられた。この結果に鑑み,本年度は免疫グロブリン産生能を持つ脊椎動物および免疫グロブリン産生能を持たない無脊椎動物におけるJoining chainの遺伝子発現および蛋白について免疫学的・分子生物学的手法を用いて検索し,以下の結果を得た。 1.Polymerase chain reaction(PCR)法により,Joining chain遺伝子が脊椎動物のヒト,マウス,ヤツメウナギおよびイワシに検出された。また,無脊椎動物ではナメクジ,カキ,ハマグリ,ナマコ,ホヤ,エビ,カニ,クモおよび蝶に認められた。これらのJoining chain遺伝子はヒトJoining chain cDNAとハイブリダイズした。 2.ミミズJoining chainのPCR産物をクローニングし,既に報告されているDNAおよびアミノ酸配列を比較したところ,ミミズJoining chain遺伝子はヒトと72%の,マウスと75%のホモロジーを持っていた。また,アミノ酸配列ではヒトと60%の,マウスと62%の,ウサギと51%のホモロジーを示した。 3.SDS-PAGEおよびWestern blot法によりミミズにヒトJoining chainに相当する蛋白を検出することができた。 4.ミミズおよびナメクジに於けるJoining chainを免疫組織学的に検索したところ,体表上皮および消化管上皮に局在していた。
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