研究課題/領域番号 |
03404053
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
須賀 昭一 日本歯科大学, 歯学部, 教授 (50060405)
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研究分担者 |
田谷 雄二 日本歯科大学, 歯学部, 助手 (30197587)
青木 春美 日本歯科大学, 歯学部, 講師 (50150925)
小川 正明 日本歯科大学, 歯学部, 講師 (40095097)
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キーワード | エナメル質 / エナメロイド / 歯 / 微量元素 / フッ素 / 鉄 / 系統発生 / 進化 |
研究概要 |
本年度中において得られた研究実績は以下の通りである。 1.軟骨魚類(サメ・エイ)のエナメロイド(enameloid)中のフッ素(F)と鉄(Fe)の定量分析をelectron microprobeで行った。その結果、分析した17種のすべてにおいてF濃度は3%以上と高く、それは魚の棲息する環境水(海水か、淡水か)や歯の形態とは関係しないことが確かめられた。更に、Feの濃度はすべての種において極めて低濃度であった。 2.真骨魚類の内、海水魚と淡水魚の両方を含み、しかも最も大きなグル-プであるスズキ目の魚(57種)のエナメロイドに含まれるFeの定量分析をelectron microprobeで行った。その結果、検索したすべての魚類においてFeは0.2%〜10.2%と高濃度であった(ヒトのエナメル質では0.02%以下)。ただし、エナメロイド内でのFeの分布パタ-ンから二つのグル-プ、即ち、表層においてのみ高濃度であるグル-プと、全層にわたって高濃度であるグル-プに分けることが出来た。ただし、これは魚のfamilyと関係するが、それらが棲息する環境水や生物地理学的条件とは関連しないことがわかった。即ち、魚の系統発生(phylogeny)と関連する様である。 3.哺乳動物であるラットの切歯のエナメル質では、その石灰化の末期においてエナメル芽細胞よりエナメル質表層に向って大量のFeが分泌されることが知られている。細胞の微小管阻害剤であるcolchicineをラットに一回注射してエナメル芽細胞の機能をブロックし、それによるエナメル質石灰化の障害とFe沈着の変化を経時的に観察した。それによると、エナメル質成熟期の末期にあるエナメル芽細胞が選択的に、しかも周期的に障害され、それに相当するエナメル基質に全層にわたる低石灰化と表層でのFeの沈着の減退が起こることがわかった。
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