研究概要 |
[低カルシウム食飼育ラットを用いた実験]低カルシウム(低Ca)食飼育ラットの歯槽骨吸収に関する検索を行った。生後30日齢のWistar系雄性ラットを用い、実験群には低Ca食(0.05%Ca)、対照群には正常Ca食(0.5%Ca)を含む半合成飼料を与えて飼育し、実験開始3,6,9,20日後に屠殺し、歯槽骨臼歯部の組織学的観察を行った。低Ca食飼育により臼歯部歯槽骨の海綿骨ならびに皮質骨の骨髄側に著しい骨吸収が起り、飼育6日目にて約半部の骨量が減少した。それ以降20日目まで、骨量は徐々に減少した。また歯根に対する歯槽骨量の比は、実験6日目より減少を始め20日目で著しい低値を示したが、固有歯槽骨は幅が減少するものの完全には吸収されなかった。以上の実験結果から、低Ca食飼育ラット歯槽骨臼歯部における骨吸収は、海綿骨と皮質骨の骨髄側を中心にして起こることが明らかとなった。しかし固有歯槽骨が喪失しないことから、歯牙の支持組織としての機能は低Ca食状態においても維持されているものと考えられた。 [in situ hybridizationによる実験]コルヒチン投与ラットを用いた異所性骨の骨吸収実験系においてosteopontinのプローブを用いてin situ hybridizationを行ったところ、実験初期の形成時期に比較して、実験10日目の吸収期の異所性骨の骨芽細胞と骨細胞でosteopntinのmRNAの発現が著しく上昇していた。また、この時期に多数出現する破骨細胞を観察すると、そのいくつかにosteopontinのシグナルの集積が認められた。以上の結果より、osteopontinのmRNAは骨吸収時期に特異的にその発現の上昇を示し、異所性骨の吸収にosteopontinのde novoの合成が重要であると考えられた。また破骨細胞自身による産生も示唆されたことから、オステオポンチンの骨吸収における役割が強く示唆された。
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