研究課題/領域番号 |
03404062
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
神谷 暸 東京大学, 医学部(医)・医用電子研究施設, 教授 (50014072)
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研究分担者 |
安藤 譲二 東京大学, 医学部(医)・脈管病態生理, 客員助教授 (20159528)
柴田 政廣 東京大学, 医学部(医)・医用電子研究施設, 助手 (60158954)
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キーワード | 血管内皮細胞 / ずり応力 / 細胞内カルシウム / ATP / 血流 / 血行力学因子 |
研究概要 |
平成3年度は主として血管内皮細胞の流れに対する検知機構に関し細胞内カルシウムの動態から検討する実験を行った。牛胎児大動脈内皮細胞をカバ-スリップに培養しこの細胞に我々が独自に開発した装置内で種々の速度の定常流れを負荷し、その際の細胞内カルシウム濃度の変化をカルシウム感受性色素のFuraー2と螢光測光顕微鏡を用いて測定した。潅流液は種々の濃度のATPを溶解したハンクス平衡塩類溶液を使用した。その結果ATPが100nM以下では有意なカルシウム濃度変化を観られなかったが、500nMでは流速の段階的増加に対応したカルシウムの上昇が観察された。一方ATPが1〜5nMになると流速の変化に伴いカルシウムも上昇するがATP500nMでみられた流速依存性は認められなかった。またATPが500nMでは最初にある速度の流れを負荷しておき、ついでさらに速い流れを反復して負荷するとそれぞれの負荷に対応するカルシウム上昇反応が出現した。流速を段階的に減少させると逆にカルシウム濃度も段階的に減少するなどATP500nMの条件では細胞内カルシウム濃度が流れの変化に良く対応して変化することが示された。この流れに依存するカルシウム反応はEGTAで細胞外液中のカルシウムをキレ-トすると著明に抑制されることから細胞外カルシウムの細胞内への流入がその主たる径路と考えられ、この機構にLansmanらが示した内皮細胞膜に存在するとされる機械的ストレッチに反応するカルシウム・イオン・チャンネルの関与が推察された。今回の実験の結果から内皮細胞には流速あるいはShear Stressの変化を検知しその情報をセカンド・メッセンジャ-のカルシウムを介して細胞内部に伝達する機構の存在が示唆された。今後この機械的ストレスを検知するセンサ-及びその局在、さらに機械的ストレスの情報が生化学的な代謝の変化に変換されるプロセスにつき検討を加え血流に起因する血管内皮細胞の反応の分子機序にアプロ-チする予定である。
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