A群色素性乾皮症の原因遺伝子(XPA遺伝子)をクローニングし、C4タイプのZnフィンガーモチーフを持つ273個のアミノ酸からなる親水性蛋白をコードする事を明らかにした。 XPA遺伝子の機能を解析する為、大腸菌内でXPAcDNAを発現させ組換えXPA蛋白を精製した。ゲルシフト法、フィルター結合法でXPA蛋白のDNA結合能を調べたところ、紫外線(UV)照射していないDNAにもXPA蛋白は結合したが、UV照射したDNAにはより多くのXPA蛋白が結合する事が解かり、XPA蛋白は障害DNAを認識する機構に関わる蛋白である事が示唆された。さらに、より多くのXPA蛋白が、シスプラチンやAAFなどの化学物質、あるいは活性酸素によるDNA障害を引き起こすOsO4処理を受けたDNAに結合し、XPA蛋白単独で多種類のDNA障害を認識出来る事を明らかにした。一方、A群XP患者におけるXPA遺伝子の突然変異を明らかにし、保因者診断、胎児診断等のA群XPの遺伝子診断を幾例か行なった。さらに、A群XPの病態を解析する為、ES細胞におけるXPA遺伝子ターゲッテイング法によりXPA欠損マウスを樹立した。このマウスは正常に生まれ、生後1年半の時点では、肉眼的に解かる様な形態上、行動上の明らかな異常は認められなかった。しかし、XPA欠損マウス由来の繊維芽細胞は、A群XP細胞と同様にUVに高感受性を示し、DNA除去修復能は欠如していた。さらに、化学発癌剤DMBAを用いて皮膚発癌実験を行なったところ、XPA欠損マウスではDMBA塗布一週間後に強い皮膚潰瘍が形成され、さらに一ケ月後にはその部分にパピローマの発生が認められた。正常マウスおよびヘテロ接合体マスでは皮膚潰瘍は認められず、パピローマの発生も低頻度でずっと後期になって認められるのみであった。以上の様に、このマウスは少なくとも発癌性に関しては、XPの良いモデルになると思われた。
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