研究概要 |
エンドセリン(ET)のヒトにおける病態生理的意義を明らかにする目的で,ヒトETレセプタ-(ETR)のクロ-ニングを行い,2種類のETRの構造を決定した。ETRAはETー1,ETー2に親和性が強く,血管平滑筋によく発現されていた。一方ETRBはETー1,ETー2,ETー3と同程度に結合し,脳,血管内皮に発現が強かった。従って内皮より分泌されるETは自身に働いて機能を調節する自己分泌のメカニズムを持つことが推測された。次に甲状腺ホルモン・レセプタ-(T_3R)について検討を加えた。T_3Rα,βにともに反応する抗体を用いT_3Rが下垂体前葉細胞や脳にも存在することを免疫組織化学的に明らかにするとともに,ウェスタンブロット法でその存在を確認した。また甲状腺ホルモン不応症の一家系でT_3Rβ,遺伝子について検討し,1612番目の塩基の点突然変異(A→G)により,438番目のアミノ酸Lys→Gluの置換が起こり,ホルモン結合能が著明に低下することを明らかにした。更にその他の家系についてもその変異の本体を分子生物学的に検討中である。次に甲状腺刺激ホルモンレセプタ-(TSHR)の構造が明らかになったので,バセドウ病甲状腺刺激抗体の結合部位を合成ペプチドを用いて検討した。その結果アミノ酸333〜343に担当するペプチドは抗体の甲状腺刺激活性を有意に抑制したが,TSHの作用には影響せず,抗体の結合部位の少なくとも一部になっているものと推測された。更にインスリンがそのレセプタ-に結合してからの情報伝達の仕組みについて検討し,糠輸送担体の膜への移行にアクトミオシン系が関与することをミオシンライトチェ-ンキナ-ゼ阻害剤ML9を用いて明らかにした。恐らくインスリンレセプタ-キナ-ゼはいくつかの蛋白のリン酸化を介して作用するものと考えられる。
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