研究概要 |
昨年度に引続き、小胞体膜への蛋白質の組み込み機構とミトコンドリアへの蛋白質の輸入機構について研究を進め、下記の結果を得た。これらの研究成果はいずれも論文として公表されている。 1.小胞体内腔に存在するカルボキシエステラーゼ群の1分子種が小胞体留置シグナルを欠くために肝細胞から血液中に分泌されることを培養細胞と全動物での実験で確認した(J.Bioche〓.,113.61-66)。 2.小胞体での蛋白質分子の膜透過機構を解析するため、無細胞実験系を用いて膜透過中のペプチドと膜蛋白質との化学架橋試薬による架橋実験を行ない、小細体膜の39kDaと9kDaの2種の蛋白質が膜透過中のペプチドと架橋されることを見いだした。39kDa蛋白質は既に報告されている膜蛋白質と同一らしいが9kDa蛋白質は新しい膜蛋白質である(J.Biochem.,114,541-546)。 3.ミクロソーム型P-450の小胞体膜への組み込みを無細胞系での実験と酵母細胞での発現実験により検討し、P-450aromではシグナルアンカー配列のN末端が内腔に露出していることを糖鎖の付加により証明した(J.Biol.Chem.,268,21399-21402)。またミクロソーム型P-450に共通にシグナルアンカー配列の直後に見られるプロリンに富んだ特殊な配列の機能をP-450(M-1)について調べ、この配列を改変する小胞体膜に組み込まれたP-450の高次構造形成に異常を来すことを確かめた(J.Biochem.,114,652-657)。 4.無細胞系でミトコンドリアへの前駆体蛋白質の輸入が肝細胞の上清分画で促進される現象を研究し、促進効果をもつ蛋白質因子を精製した。この蛋白質は無細胞系で合成された前駆体蛋白質をミトコンドリアへの輸入可能な構造に保持する機能をもつ分子シャペロンである(EMBO J.,12,1579-1586)。
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