研究課題/領域番号 |
03404074
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大西 俊一 京都大学, 理学部, 教授 (00025272)
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研究分担者 |
村田 昌之 京都大学, 理学部, 助手 (50212254)
佐藤 智 京都大学, 理学部, 助手 (30183049)
伊藤 忠直 京都大学, 理学部, 助教授 (90093187)
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キーワード | エンドサイトーシス / エンドソーム / 膜融合 / 時間分解顕微蛍光法 / 共焦点レーザー顕微鏡 / 蛍光共鳴エネルギー移動 |
研究概要 |
我々はこれまでに、時間分解顕微蛍光法を用いて、細胞内のエンドソーム融合を測定してきた。二種類の蛍光プローブを、エンドサイトーシスによって細胞内に段階的に取り込ませた後、各蛍光プローブを含んだエンドソームが融合すると、両蛍光プローブ間の距離が短くなり、蛍光共鳴エネルギー移動(RET)が起こる。このとき、RETのエネルギー供与体の蛍光寿命が短くなるので、これを測定することによって、RETの程度、すなわち融合の程度がわかる。ところが、細胞内のように様々な分子が存在する系では、供与体分子同士の衝突や供与体分子と細胞内の消光物質の衝突などによる消光のために蛍光寿命が短くなる場合もあるので、RETが供与体の蛍光寿命に与える影響だけを検出するのは難しかった。 そこで、本年度はRETによって、RETのエネルギー受容体の蛍光寿命が長くなるのを測定するために、エネルギー供与体としてpyrenebutyrate、受容体として紅藻・ラン藻の色素タンパク質B-phycoerythrinを使用した。pyrenebutyrateの蛍光寿命はモノマーが約100ns、エキシマーが約50nsと蛍光プローブとしては比較的長く、B-phycoerythrinは約2.5nsの短い蛍光寿命を持つ。RETが完全に起こるとB-phycoerythrinの蛍光寿命は理論的には約50nsになるので、RETの効果が検出しやすくなる。また、RETの効率を上げるために、pyrenebutyrateをアビジンに結合させて、B-phycoerythrinをビオチニル化して、アビジン-ビオチン複合体の形成を利用して蛍光プローブ間の距離が短くなるようにした。 実際に、B-phycoerythrinの蛍光減衰曲線を測定すると単一成分からなっていた。そして、pyrenebutyrate-アビジンとビオチニル化B-phycoerythrinを溶液中で混合し、B-phycoerythrinの蛍光減衰曲線を測定すると、確かに、蛍光寿命が長くなっていた。また、溶液中にビオチニル化インシュリンを加えておくと、pyrenebutyrate-アビジンとビオチニル化B-phycoerythrinとの結合が阻害されるために、B-phycoerythrinの蛍光寿命は変化しなかった。本方法を利用してpyrenebutyrate-アビジンとビオチニル化B-phycoerythrinを、リポソーム(人工膜)に別々に封入して、リポソーム融合を測定することに成功した。
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