1.低密度リポタンパク質(LDL)の細胞内輸送の変異株(T41)の分離 変異剤、エチルメタンスルフォン酸で処理したCHO細胞を、コレステロール生合成経路の律速酵素(HMG-CoA)の阻害剤であるプラバスタチン存在のもと、ネガティブ選択法により単離し、LDL取り込みまたはその代謝に異常のある変異株を得た。つぎに、これらの変異株のうち、LDLの取り込みは正常であるが、その分解が抑制された表現型を示す変異株を、蛍光脂質オクタデシールロダミン(R18)とNBD-リノール酸エステル(NBD-Cl)を封入したLDL(蛍光LDL)を用いて、Flow Cytometerにより分離することを試みた。この方法は、LDLの細胞内代謝異常が蛍光性LDLの蛍光スペクトルに反映することを利用したものであり、その結果、LDLの取り込みは正常であるが、その分解が抑制された安定な表現型を示す変異株(T41)の単離に成功した。 2.時間分解共焦点蛍光顕微鏡による、T41株の細胞内選別輸送変異点の同定 上記の手順により得られた変異株T41の変異が起きている場所を、DiOとスルフォローダミン-PEから再構成した蛍光LDLを用いて、時間分解共焦点蛍光顕微鏡、細胞分画法を用いて特定した結果、(1)ライソゾーム酵素のライソゾームへのsortingに異常が見られる。(2)LDLがライソゾーム酵素のネガチブなコンパートメントに野生株に比べて多く蓄積される、などの結果を得た。これらのことよりT41では、エンドサイトーシス経路と、トランスゴルジネットワークからライソゾームへのsorting経路とが重なる点において変異が生じていることが示唆された。 今後はT41株の変異分子を同定することにより、エンドサイトシスsorting機構に於けるその分子の役割を分子レベルで解明することを計画している。
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