研究概要 |
英仏海峡トンネル計画に続いて,アジア・ハイウェイ,第2パナマ運河,等多くの地球的巨大プロジェクトのプロポーザルがなされている。しかし、これらへの資金供給については東京湾横断道路でさえ思うにまかせなかった。一方,経済摩擦と表裏一体の民間投機資金はバブル崩壊後といえども基本的には潤沢である。これを何とか(公共の)設備投資資金化して巨大プロジェクトに着手して世界経済の成長軌道への牽引車として活性化に寄与せしめて人類の夢をかなえるための礎石の役割を果たさしめようというのが本研究の目的であった。 本研究ではこのような巨大プロジェクトとしてアジア・ハイウェイ構想を選び,これを動学的公共投資規準論的観点から動学的限界機会費用原理に立脚して分析して,これを建設する場合の,しない場合に比してのアジアの際立った経済成長軌道の違いを浮き彫りにする。つまり,厖大な直接的間接的社会経済効果の形成を動学的最適化モデルに依拠して計量することが課題であった。 最終年度の主な研究成果としては:a)改良されたアジア高速道路網最適投資計画評価モデル(動学的多部門多地域最適発展モデル)の構築;b)改良されたこの理論モデルを受けての,12地域5期間9産業2住宅5交通基盤施設モデル(具体化評価モデル)によるシミュレーション:c)中国を7地域に分割し,これら諸地域,東アジアの各国,およびその他世界の相互間のマクロ的貿易連関関係資料に基づくシミュレーション;d)その成果としてこれら地域(15地域)それぞれの主要産業の産出額,資本財,これら地域相互間の財貨流動表(期間別)の導出;およびe)債務残高の期間別上限値の諸変数(外生)の制約のもとでの結果の導出,等が得られ,With and Without Testの結果,計画期間の初期においては自然成長経路とか高速道路網以外に投資を振り向けた場合の成長経路の方が高速道路網を中心とした成長経路よりも高い成長を示すのであるが,計画期間の後半ではやがて,高速道路網「有り」の成長が圧倒的な優位性を発現するということ,すなわち離陸加速化効果が最も大きいということがここでのシミュレーションで実証された。つまり,派生需要としての交通サービスに関して高速道路サービスがその総合費用が最も低廉である。換言すれば,総合機会費用(社会的便益の代理指標)の最も有利な活動工程が選択されている(最適編成されている)ということが実証されたわけである。このようにして所定の成果を得た。
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