研究目的: 宇宙ステーションなどの閉鎖された空間の中での生活において大きな問題の一つとなるのが尿の処理である。そこで、本研究では尿中で比較的除去が困難と考えられる尿素の除去に注目し、従来研究されてきたCAPDへの利用を目的とした尿素処理システムを応用し、小型、低エネルギー、かつ水の再生利用可能な尿素処理システムを作製した。 システムの概要: 本システムは大きく分けて荷電膜による尿素選択透析部と固定化ウレアーゼとNa型強酸性イオン交換樹脂による尿素分解吸着部の2つの部分からなる。 前者は荷電膜に固定されている電荷の電気的な力によって、尿中に含まれるNa^+、K^+などのイオンが膜を通過するのを妨げ、電気的に中性である尿素のみを透過させる。尿素のみを透過させる理由は、後にイオン交換樹脂によってアンモニウムイオンを吸着させるわけであるが、他イオンの侵入によって、樹脂のアンモニウムイオンに対する選択性が著しく低下するためである。 後者は尿素選択透過部によって選択的に抽出された尿素をウレアーゼによってNH_4^+とCO_2に分解し、NH_4^+をNa型強酸性イオン交換樹脂によってNa^+と交換する。 システム実験結果: 荷電膜として放射線グラフト重合膜(膜面積19.6cm^2)を使用した簡単な実験回路を作製し、尿の組成に近い溶液(尿素窒素濃度500mg/dl)を用いて全体的なシステムの評価を行った結果、6時間で約8%の尿素を処理した。この結果より、ヒト一人が1日に排出する尿素を処理するには、2000cm^2以上の膜面積が必要であることが分かった。
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