研究概要 |
1.本年度の研究成 (1)人工心臓を内蔵した人体模型“くにこ" リニアパルスモータ(LPM-S92)で駆動される完全埋込式人工心臓を試作した。これを人体模型(材質が透明なマネキン)に埋め込み,さらにその体外から経皮を通じて電力を無線で供給して本人工心臓を作動させ,生理食塩水を体内に循環させた。この人工模型を92年に開発したことを記念にして“くにこ"と命名した。1992年8月,第4回国際人工心臓シンポジウム(東京)で動態展示したところ参加者から好評であったばかりでなく,くにこは日経新聞,読売新聞で紹介された。このことは筆者ら研究グループを大いに勇気づけることにつながった。 (2)リニアルパルスモータの加速寿命試験 本人工心臓の駆動源であるリニアパルスモータ(LPM-S92)のMTTF(平均故障間隔)を調べるために加速寿命試験を行った。実験の結果,LPM-S92の寿命は実測値117日(計算値137日)となり,約4ヶ月の寿命であることがわかった。この寿命試験を制約する要因はリニアベアリングであることが判明し,今後はその対策を検討する時期に入った。本人工心臓を軽量化するためにそのハウジングにチタン合金を利用したことには成功した。 (3)ソレノイド駆動式人工心臓の試作 前述したLPM駆動式の寿命はリニアベアリングに依存することが大きいために,ベアリングを一切使用しないソレノイド駆動式人工心臓を試作した。LPMはストロークが20mmであり,拍動数は人間と同じ60〜120回/分に維持できるが,ソレノイドのストロークは5mmに制約されるので,その拍動数は300〜600回/分となる。この高拍動数形人工心臓をいかに小型化するかが,今後の研究課題となる。 2.今後の研究開発 (1)動物実験の実施 本年度は,本人工心臓システム全般にわたっての問題点を“くにこ"等の試作によってはっきりと認識できた。LPM駆動式およびソレイド駆動式の両人工心臓をヤギあるいは仔牛に埋め込んだ動物実験を実施する時期に到来した。 (2)本人工心臓の周辺機器の小型化 本人工心臓の動物実験は,他大学(たとえば,広島大学,東京大学医学部)で実施する予定である。したがって,その周辺機器としての電池,経皮エネルギー伝送システム,ドライバの小型化を計らなければならない。国産技術で小型化できるところから始め,携帯化を進めていく予定である。
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