研究課題/領域番号 |
03451002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤本 隆志 東京大学, 教養学部, 教授 (20001795)
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研究分担者 |
下條 信輔 東京大学, 教養学部, 助教授 (70183837)
高橋 哲哉 東京大学, 教養学部, 助教授 (60171500)
今井 知正 東京大学, 教養学部, 助教授 (50110284)
宮本 久雄 東京大学, 教養学部, 教授 (50157682)
山本 巍 東京大学, 教養学部, 教授 (70012515)
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キーワード | 行為 / 選択 / 行為の原因と意図 / 恩恵 / 主観的身体 / 根元的規約主義 / 制作 / 行為の自然化 |
研究概要 |
本研究は伝統的に「第一哲学」に従属すると見なされてきた「行為論的」観点の復権を図り、以て「第一哲学的」諸問題ですら行為論的に論じうることを示そうと構想された。本年度は、文献を購入整備すると共に、E.トゥ-ゲンハット、D.チャ-ルズ両氏との各合同セミナ-,集中合宿等を行い、各研究分担者が専門とする時代毎の行為論の批判的検討を通して、新たな行為論構築へ向けての基礎作業を行った。具体的な研究成果としては、 1.行為論を人間の「始め」の研究とする観点から、アリストテレスの行為論における「選択」,キリスト教的回心の問題の重要性を指摘し、 2.行為の原因とは何かという問題と連関してプラトンの原因概念一般の捉え方とその諸法の検討を中期イデア論成立の観点から試み、また、 3.中世哲学において特徴的な習性、徳、心の内的構造(ペルソナ)、超越者との関係(恩恵)等の問題性の行為論的意義を探り、 4.近世的心・身二元論を内側から批判するメ-ヌ・ド・ビランが提示する「主観的身体」の位相を掘り下げ、身体論の基盤を形成した。 5.従来の研究において精密に分析されてこなかったハイデガ-の『存在と時間』の行為論の構造を、分析哲学的手法を用いて明らかにし、 6.ヴィトゲンシュタインにおける根元的規約主義という論点を確立、意味と意図の関係についてアスペクト論の観点から研究を行い、 7.証明という言語行為の特性、記号学における語用論と制作論の新たな位置づけについて、新たな論点を明確化し、 8.主体的身体に依拠して知覚と行為を連続的に把握するメルロ=ポンティ哲学が、行為の「自然化」のアポリアに陥いることを明らかにした。 以上の行為論の比較検討、現代認知科学の諸知見とのつきあわせ、統合的な行為論構築の試みは、次年度に集中的に行う予定である。
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