研究課題/領域番号 |
03451002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤本 隆志 東京大学, 教養学部, 教授 (20001795)
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研究分担者 |
門脇 俊介 東京大学, 教養学部, 助教授 (90177486)
下條 信輔 東京大学, 教養学部, 助教授 (70183837)
今井 知正 東京大学, 教養学部, 助教授 (50110284)
宮本 久雄 東京大学, 教養学部, 教授 (50157682)
山本 巍 東京大学, 教養学部, 教授 (70012515)
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キーワード | 行為 / 身体 / 規範性 / 意図の自立性 / 潜在的な心的過程 / 表象 / 志向性 / 制作 |
研究概要 |
本研究の意図は、従来の「表像論的認識論」を転換して、むしろ我々自身の実践的言語使用によって諸世界がその都度構築され、あるいは脱構築されていくと考えるような「行為論的制作論」の可能性を探るというものである。今年度は特に、昨年度行われた個別の歴史的研究の成果を踏まえ、研究の重点を理論的研究に移し、身体行動・意図・感覚等と我々の行為の概念的関係を検討した。具体的には、(1)認知・知覚・認識・理解・解釈といった知識論的な認識諸様態も、行為や制作との直接的な連環の中で初めて意味をもちうるという仮定を立てて、これを特に現代行為論の検討によって吟味し、(2)またその逆に、西洋哲学の伝統が何故意志や行為を理性や感性から分離し、実践を理論や制作から区別せざるを得なかったのかを、昨年の成果を踏まえて再検討し、その伝統の中にも実は現代行為論への大きな示唆を与える流れがあることを明らかにし、(3)言語行為や実践哲学や価値体験の学的身分をその軛から解放し、人間の経験や営為の全領域に通底するような基本的役割を賦与して、従来の哲学知や科学知における真理値すら「行為価値」として再評価できるような行為学の構築を試みた。ア・プリオリ概念の行為の規範性への読み換えや表象には還元されない意図の自立性が重要な論点となった。また、共同研究者である認知科学の研究者との共同作業によって哲学と心理学に跨がる一層包括的な視点の獲得をも目指し、運動感覚学習や人口知能などの実証的研究に基づく身体運動と象徴認識、表象的認識と非表象的認識などの関係に関する知見との突き合わせによって、表象論的認識論によっては捉えることの出来ない潜在的知・暗黙知の次元と志向性概念の関係係付けの問題が重要な問いとして浮かび上がった。研究助成期間が申請よりも一年短くなった為に、統合的な行為論の形成には到っていないが、これは緊急の課題として即座にまとめに入るつもりでいる。
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