研究課題/領域番号 |
03451003
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
大谷 啓治 上智大学, 文学部, 教授 (30053557)
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研究分担者 |
渡部 菊郎 上智大学, 文学部, 講師 (30191810)
鈴木 宣明 上智大学, 文学部, 教授 (30053531)
シロニス R・L 上智大学, 文学部, 教授 (60053500)
リーゼンフーバー K 上智大学, 中世思想研究所, 教授 (60053633)
フィルハウス J 上智大学, 神学部, 教授 (70053501)
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キーワード | 教父思想 / 社会思想 / カロリング・ルネサンス / 修道院文化 / 友愛論 / 国家理念 / 君主論 / 共同体 |
研究概要 |
西洋中世の社会思想を古代末期の教父思想から16世紀の初期近世思想に至るまでを解明する本研究は、本年度12世紀半ばまでの時代を研究テ-マとした。4月から7月は、全体的計画を立てた。その際、当時の社会組織論、特に教会一国家・政治関係の諸問題は、研究が多少あるため中心的研究課題から外し、思想史的研究方法を重視することが決った。8月から12月までの研究では研究者をグル-プに分け、1.教父思想とその影響、2.カロリング・ルネサンス時代、3.11ー12世紀の研究に取り組んだ。1.教父時代に関して、(1)エウセビウスに見られるキリスト教的国家理念、(2)ノラのパウリヌスの友愛論、(3)アウグスティヌスの二重的社会理論、(4)大グレゴリウス一世における政治的責任感と聖職者理念の結合に関して研究を進めた結果、11ー12世紀の多様な社会思想の原点を見極め、キリスト教的国家論と世俗社会論の緊張関係を理解することができた。2.カロリング・ルネサンス期に関して、新しい君主理念における古典古代からの学びと旧約聖書、またのちに終末思想の多大な影響とともに「君主の鏡」などに見られる教育論・君主像の倫理的高揚の試み、また支配者像の生活・社会政策に対する様々な批判が浮彫になり、新社会のキリスト教的基礎付けをめぐる努力・諸論争が分析された。3.11ー12世紀に関して、社会思想の人間論的な裏付けつまり人間尊厳論の登場とともに人間関係論・友愛論への新しい洞察において古典古代のヒュ-マニズム受容の自発的努力が発見され、当時創立された新修道会における共同体と個人の創造的な緊張関係が教会と社会の関係を再構造化する原動力の一つとして注目された。1月ー3月まで12世紀のサン=ヴィクトル派における宗教的社会位階論説とシャルトル学派における世俗的社会論の相違、また大学設立による研究者像の変遷を研究し、平成4年度に予定する13世紀以降の社会思想の研究の基礎研究ができた。
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