CRT及びマクスウェリアン視光学系による刺激呈示・消去同期信号を脳波情報と重畳させることにより、色彩認知の時間的・空間的要因に関する精神物理学的及び精神生理学的研究のより洗錬された統合が可能となった。又、従来理論的にも限界があったフーリ工解析に代えMEM解析(MAXIMUM ENTROPY METHOD)によって得られたデータに基づく脳電図マッピングを完成させた。 現在、上記の新手法による研究の途についたばかりであるが、これまでに明らかになったことは(1)暗室中での閉眼、開眼時において脳波スペクトルに差異がみられた。即ち前者ではα波が、後者ではβ波が優位となる。(2)赤・緑色光の色相の違いに関係なくα波は後側頭で、β波は前頭でそれぞれ優位となる。(3)色光の強度変化は脳波スペクトルに僅かではあるが影響を及ぼす。即ち高強度(59cd/m^2)の場合はα波のピーク値が高周波部に、低強度(2.2cd/m^2)の場合はβ波のピーク値が低周波部へ移動する傾向が認められた。(4)MEM解析による脳電図マッピングでは、α波は後頭部では眼が光照射されると抑制を受け、後側頭部で活動を強めることが明らかになった。(5) のオン、オフ効果、明順応効果といった時間的要因効果は、脳波スペクトルのピーク位置や数にはみられなかった。同時色対比や色同化といった空間的要因の効果については目下研究進行中である。
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