昨年度に引き続き、健常母子の縦断観察(4組)、障害母子のプレイ場面におけるコミュニケーションの観察記録、および養護学校における子どもー教師、教師ー教師、親ー教師のあいだのコミュニケーション記録を、本年度も継続して行なった。 これによって、当初の目的の一つであった3歳過ぎまでの母子間コミュニケーションのデータ収集が達成された(2組)。なお、観察は継続中であり、またこれまでの観察で欠落していた0、1、2カ月の母子間コミュニケーションのデータを得るために、本年度途中から新たに1組の観察を開始した。この観察を通して、従前の研究でほぼその概要を明らかにしておいたコミュニケーション発達の構造にデータ上の肉付けが可能になった。また、これらのデータをエピソード記述とビデオ映像の静止画添付という方法によって提示し、これによって初期母子間コミュニケーションの実態を明らかにする手法を開発した。 また、障害母子の観察では、母親カウンセリングを通してそのコミュニケーションに顕著な改善がみられる事実が明らかにされ、これも従前のコミュニケーション構造モデルを精緻化するのに役立った。 さらに、養護学校の観察では、子どもの問題行動(他児を叩く、引っ掻く)をきっかけに浮上した指導を巡る親ー教師間のトラブルの分析から、教師の主観的な側面(本音の気持ちの動き)が個々の局面におけるコミュニケーションを方向付けるという点がその記録から明らかになった。このデータも従前の構造モデルを補強し深めるのに寄与した。 以上の今年度の研究実績のうち、健常母子のコミュニケーション・データの一部を中心に、新たに開発した手法によって整理し、成果報告書にまとめた。
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