平成4年度は前期、後期の2度に渡って被験者母子の観察を行った。前期は1組の母子を観察室に入れ、対面配置で着席、予めの作成しておいた作文をその通り別紙に書き写させ、この課題が終了後母親が作った10文字前後の短い文章を4つ、順に書き写すという作業を行った。観察室には各種のおもちゃが置いてあり、子供は遊びたいという気持ちを押さえて課題に取り組まなければならない状況を設定した。これらの課題が終了後、母子の本読みに移り、童話の中でネコが食べてしまった7匹の動物の名前を全て正しく答えられるまで、反復して記憶させる作業を行った。母子がどのようにしてインタラクションするかということを観察内容とした。これらの課題が全て終了後、10分間の自由遊びが設定された。男児と女児の作業時間に大きな差が認められた。また女児はスムーズに課題に乗れたが、男児には課題遂行を要求する母親に対して攻撃的言動が目立った。椅子にじっと座っていることも男児において困難であった。後期は男女の性別で分けた3人集団の、レゴブロックを利用した遊びを課題とした。3人の子供達がレゴで飾られた部屋に入り、集団遊びを始めて5分経過した後、予め決めておいた順に母親が入室し、幼稚園・保育園での日常生活の様子に関する聞き取り調査を行った。この手続きは子供の遊びを中断し、出来上がったグループ構造を分断することを目的としている。1人の母親は10分間聞き取り調査を行い、ノックを合図に退室、3分後に次の母親が入室した。3人目の母親が退室して残り約8分が子供だけの集団遊びとなる。男児の集団においてはすぐに仲間関係が形成され、言語コミュニケーションや相互作用も非常に豊富であった。また想像的な遊び内容も豊富であった。逆に女児は友達と関係せず自分のみの遊びに終始し、言語コミュニケーションや相互作用は殆ど見いだされなかった。
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