存在証明に躍起になる人々に「癒し」や「鎮め」の機会や方法を提供するヒ-リング・ビジネスがいま都市を中心に盛んである。中でも私が調査対象に選んだ「気づきのセミナ-」と呼ばれる一群の活動は、多くの人々を魅き付けている。「気づきのセミナ-」は、存在証明からの自由、自己信頼の回復、コミュニケ-ション能力の向上などを漠然と望んでセミナ-に参加してくる人たちに、そのためのトレ-ニングの場や技術を提供する商業ベ-スの活動である。 「気づきのセミナ-」の国内での歴史はそれほど古くない。業界最古参のライフダイナミックスやIBDでさえその歴史は僅か十数年にすぎず、大部分はここ五年ほどの間に設立されたものだが、今日「気づきのセミナ-」は、老舗のライフダイナミックスとIBDに、後発ながら近年急成長を見せたライフスペ-ス、BeYou、フォ-ラムを加えた五大セミナ-の他に、大小数十のセミナ-を含む一大産業として成長している。 「気づきのセミナ-」についてはマスコミでも「洗脳体験」とか「人格改造セミナ-」とか「自己啓発セミナ-」というようなレッテル貼りを伴う形で取り上げられ、体験レポ-トなども発表され、問題点が指摘されているが、私からみるとそれらは「気づきのセミナ-」の全体像を正しく伝えているとは思えない。そこで、私自身のセミナ-参加体験をもとに、「気づきのセミナ-」の意義を考え直してみようというのが今回の調査研究だった。 初年度の研究成果は、『アインデンティティ・ゲ-ムー存在証明の社会学』新評論(近刊)で発表する。
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