補助金が交付された3年間は、「新明社会学研究会」(田野崎昭夫、山本鎭雄)の研究活動を継続し、研究資料の収集と研究成果の取りまとめを行なった。『新明社会学研究』を創刊し、3号まで編集・刊行し、収集した資料を掲載するとともに、新明社会学研究の課題を明らかにした。 新明正道(1898-1984)は日本を代表する社会学者であるが、彼が生きた時代と彼の活動を特徴づければ、(1)大正デモクラシーが高揚する東京大学新人会の時代、(2)昭和恐慌のもとでファシズムが台頭し、知識社会学や政治社会学の研究をとおして、時代の逆流に抵抗した時代、(3)日中戦争・太平洋戦争期に時局的評論(『東亜協同体の理想』など)や民族社会学の研究をとおして、暴走する軍部中央とファシズムの思潮を牽制した時代である。新明正道はそれぞれの時代に誠実にかかわり、社会学の体系の構想し、ついに「行為関聨」の立場から綜合社会学を体系化した。 「新明社会学の同時代史的研究」のためには、彼の著作ばかりでなく、社会学関係の論文、さらに膨大な社会・政治・文化に関する評論や論説、未公開の日記などの収集も準備的に重要である。 『新明社会学研究』には、未公開の「伯林日記」を収録し、また研究期間中に収集した著書・論文の目録を掲載した。没後十周忌にあたる追悼会に出席した関係者の発言を収録した。また『新明正道著作集』全十巻が完結されたので、企画から完結までの随想を掲載した。なお論考として山本鎭雄、「ベルリンはなおワイマール文化の真盛り」、「新明社会学の同時代史的研究序説(その一)」を掲載した。 今後、この個人研究雑誌は刊行を継続する予定である。
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