本年度は、昨年度に実施した在宅ひとりぐらし老人調査のデータ入力と集計・分析を行った。 調査は、大阪府河内長野市に居住する65歳以上のひとりぐらし老人の全数1223名を対象に、訪問面接法により実施された。調査対象者は同市の住民基本台帳より抽出されたが、485名(39.7%)が同居家族がいる等により調査対象から除外され、残りの738名(60.3%)が本来の調査対象者となった。738名の調査対象者中627名より回答を得ることができたので、この627名のひとりぐらし老人について分析を行った。有効回収率は85.0%であった。 ひとりぐらし老人は社会的に孤立し、孤独であるとみなされることが多いが、本調査の結果は、この種の観念が誤りであることを示した。全体の約7割が別居子を有し、しかも別居子の多くは比較的地理的に近いところに居住していた。そのため、子どもとの間に頻繁な交流を維持している者が多く、さらに兄弟・親戚や近隣住民との間にも頻繁な交流を維持している者が多かった。また、他者との頻繁な交流を前提として、ソーシャル・サポートを得られる者が多く、特に兄弟・親戚や近隣住民からサポートを得られる者が多かった。 全国の在宅老人を対象として行われた調査の結果と比較して、河内長野市のひとりぐらし老人は、全体としてみると、特に社会的に孤立しているわけでも孤独なわけでもなく、また特に病弱、貧困、もしくは幸福度が低いわけでもないことが明らかになった。しかしその一方で、心身の健康や生活水準、社会関係面で脆弱性を有する者が存在することも判明したので、今後は、ひとりぐらし老人の類型化や、その性・年齢・居住地特性別の分布を解明する作業を進めることにしたい。
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