本研究は、自然物(主として、土、粘土、水、砂、等)を素材とした児童の制作・構成活動がどのように人間形成的意味を有するかを明らかにすることを目的としている。上に述べた児童の制作・構成活動を含む授業に内在している授業諸要因の関連構造を分析し、その性格を考察する。そして、その性格からすでにいくつかの授業から抽出された授業諸要因にもとづいて構成された授業の理論的構造の性格と比較し、両性格を関係づけることによって、人間形成的意味を考察するという研究方法をとっている。この段階で、明らかになった諸点を挙げると次のようである。 1.授業記録から子どもの発言や活動に含まれる諸要因を直接に抽出するのは困難である。そこで、本研究では、子どもの思考過程に介在する諸要因を顕在化するためには、授業記録を整理して、子どもの発言を中間項に構成しなおすという方法が有効であることを明らかにした。現在、このような中間項を記述する記号を40余り開発した。 2.本研究では、授業のいくつかの場面における子どもの発言を中間項に構成しなおし、それにもとづいて子どもの思考過程の諸相を顕在化し、それら相互の関係を統合することを通して構成活動の人間形成的意味を考察した。この考察の過程で、授業場面によって、関連構造の主要な中核を占める要因に変化が見られることが明らかになった。即ち、作品を構想する場面では、「わからない」など困難さの自覚という要因が、また作品を子ども相互に評価する場面では、「よかった」「うまい」など対象に対する感情の要因と「立体感がある」「引き立つ」など対象への観点の要因が集中して表れていることが分かった。
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