平成4年度の研究では昨年に引き続き、技術進歩を示す全生産要素生産性を使って、短期の技術進歩率と長期の技術進歩率が各業種別にみた学歴別の労働需要や賃金及び転職率にどのような影響を及ぼしているのかを、さらに詳しく分析した。その結果わかったことは以下のとおりである。 (1) 技術が雇用に与える影響を男女別にみると、男子のみでなく女子についても、短期の技術変化の速いところほど高学歴の労働需要が高まっていること、また、これらの産業では他の学歴よりも高い賃金を支払っており結果として学歴間賃金格差が拡大している。このことは職場において性差よりも学歴差が拡大しつつあることを示唆している (2) 新技術の職場導入が進んだ1980年代に入って、学歴間の賃金格差が拡大している。これは、勤続年数が賃金に与える影響を一定にしても確認される。さらにこれを年齢別にみると、20代の労働者のあいだでは拡大傾向にある一方、40代の労働者のあいだでは縮小傾向にあることがわかった。 (3) 研究開発費の伸び率と短期の技術進歩率との相関をみると、研究開発費の伸びの大きいところほど技術進歩率も速く、大卒の新規採用も活発なことがわかった。このことは、技術の変化が通常仮定されるような外生変数ではなく内生変数である可能性が強いことを示している。 (4) 新技術の導入は高学歴の労働需要をふやす一方で正規従業員を非正規従業員に代替する働きをもつ。(たとえば銀行などの技術導入の速いところで70年代後半から女子の正規従業員の数が減少し非正規(派遣社員など)従業員の数が倍増している。その結果、正規従業員と非正規従業員の賃金格差が拡大している。
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