研究概要 |
今年度は、研究の最終ステップとして中小・ベンチャー企業へのアンケート調査(関西圏から京都と兵庫、関東圏から神奈川,中部圏から静岡、そして地方圏から富山の6府県)のデータを統計的に分析した。調査の概要は、回収率約19.4%、回収企業総数354社であった。回答項目総数119という質問の多さにもかかわらず、各府県から20%前後の回答を得たことは、ベンチャー・新規企業の経営・資金問題への関心の高さを示していると思われる。 この調査で企業に提示した新しい資金調達手段に対して、多くの企業は積極的な態度を示した。それは、企業の設立から今日まで、取引銀行との関係において、いくつかの問題点が浮き彫りにされてきた事と密接に関連する。メインバンク取引関係は安定的であると言われるが、それは約3分の1の企業にとっての幻想に過ぎないことが明らかになった。もちろん、他方で、メインバンクに対し信頼をおいている企業も3分の1以上に達しているが、このような企業でも資金調達の多様化は望ましい事である。 経営問題全般に関しては、リスクと成長との間に興味深い関係が発見された。リスクと成長との間には必ずしもトレードオフ関係が認められなかった。成長と銀行取引関係については、成長と共に信頼関係が一般に上昇する傾向が認められた。 この様な成長と銀行取引との関係は、国際的に大きな話題となっていた。欧米各国では、現代の重要な経済政策問題の一つとして、企業の活力、そして、社会の活力を高めていくことが重要となっている。そのための手段としては、新しい技術、新しい市場、新しい経営組織を持った若い企業を生み出していく事が不可欠である。この問題は、また地方の活性化の問題ともつながっている。 このような様々な観点から、我々は調査地域を都市圏と地方圏の二つに分け、かつ新しい企業に調査を絞ったわけであるが、本調査の分析をさらに発展させる必要性が高いことが判明した。なお、統計分析・調査を進める一方で、ベンチャー企業に関連する既存の資料やデータの収集も行い、それらを用いた関連論文も執筆した。
|