研究概要 |
1.経営複合化の動機と共通生産要素の実態的解明:(1)「水稲+肉用牛(繁殖,肥育)」型大規模複合経営では自然乾燥した良質な稲藁の調達ルート(良質な稲藁が低いコストで迅速かつ適時に取得できるルート)という情報的資源の確保が重要な経営課題となっている。(2)生産技術に関する情報的資源として重要なものは作目の僅かな生育の変化も見逃さない優れた観察力であり、かつそれを総合的に判断する能力である。これらの能力はすべての作目について有用なものであり、生産技術に関する情報的資源の本質をなすものである。2.「水稲+露地野菜」及び「水稲+施設野菜」型大規模複合経営における経済効率性の改善と事後的規模・範囲の経済性に関する実証分析:(1)他の条件を一定とすれば、「水稲+露地野菜」では賃金及び資本財用価格の相対的な上昇による経済効率性の改善効果が大きく、「水稲+施設野菜」では、経常財価格の相対的な上昇によってより大きく経済効率的が改善される。(2)「水稲+露地野菜」における経済効率性の改善は事後的範囲の経済の源泉を土地の有効利用から資本財の有効利用へと変化させる働きを持つのに対して、「水稲+施設野菜」では労働の有効利用から経常財の有効利用へと変化させる働きを持つ。3.総合農協における複数部門の兼営と経営成果に関する実証分析:経営指標と多角化度指数等との回帰分析の結果、多角化度指数の上昇は自己資本比率と固定比率(I)及び(II)の3指標,職員一人当り事業総利益,正組合員戸当り販売品販売額を増加させることが明らかになった。兼営化は経営の安定性や効率性、ならびに組合員による利用度を向上させる効果があることを示している。
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