研究課題/領域番号 |
03451091
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武部 隆 京都大学, 農学部, 助教授 (30093264)
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研究分担者 |
新山 陽子 京都大学, 農学部, 講師 (10172610)
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キーワード | 農業法人 / 協業経営 / 集団的生産組織 / 土地利用調整 / 企業経営 / 労働力利用経営 / 土地利用経営 / 農業経営利度 |
研究概要 |
今年度に行った研究によった得られた成果は、次の通りである。まず、農業法人化の問題の本質は、農業に固有の経済主体が何であるかという点を明確にすることである。農業に固有の経済主体に農業に固有の法人格を与え、その法人に制度的な優遇措置・援助措置を講じていくことになるからである。本研究では、農業に固有の経済主体として、(1)協業経営、(2)集団的生産組織の農地提供者団体(および共同経営そのもの)、(3)労働力の組織化または資本財の組織化を目的としたいわゆる生産組織(労働力・資本財結合生産組織型団体)、それに(4)土地利用調整を主目的とした土地利用調整組織(土地結合生産組織型団体)、の4主体(共同経営そのものを入れると5主体)を抽出した。そして、これら4主体(共同経営そのものを入れると5主体)に係る5法人(共同経営法人を入れると6法人)が、真の意味での農業に固有の法人だと結論づけることにした。すなわち、(1)に対する協業経営法人、(2)に対する特別協業経営法人、共同・委託型経営法人、共同経営法人、賃貸型組織法人(経営委託型組織法人を含める)、それに(3)(4)に対する生産要素結合型組織法人である。 これら4経済主体(ないしは5経済主体)の経営的特質は、営利(資本純収益の最大化)を目的とする企業経営ではないというところがポイントである。企業経営とは、私的資本出資と賃金労働の結合関係に基づく資本純収益最大化を目的とする営利組織である。しかし、これらの4経済主体(ないしは5経済主体)は、そのようなものとして把握できる経済主体ではない。すなわち、(1)は労働力利用経営で労働力純収益の最大化を目的としている。また、(2)は土地利用経営であったり、土地利用経営と労働力利用経営の折衷であったり、単なる地代収得者であったりして、いずれも資本純収益の最大化を目的とする経済主体では決してない。さらに、(3)や(4)はそれ自体が収益の最大化を目的とする経済主体とはなっていないのである。ここに、これら4経済主体(ないしは5経済主体)が農業に固有の経済主体であり、したがってまた上記5法人(ないしは6法人)が農業に固有の法人である根拠が存在する。 農業に固有のこれらの5法人(ないしは6法人)を各種の要件で厳しく規制する。しかし、これら農業に固有の法人には、政策税制、政策融資を始めとする会社法人にはない優遇措置・援助措置を認めていく。また、農業に固有のこれら法人間の移行がスム-ズに行えるような措置も講ずる。このような思い切った農業経営制度政策の展開が、いままさに求められていると考えることができるのである。
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