社会的・経済的環境の変化と技術革新の進展の中で、農業経営は変貌しつつあり、家族経営の性格分化が進む一方、協業経営や企業経営それに法人経営の形成もみられるようになってきている。このような状況の中で、本研究は、主として次の5点において、その成果をあげることができた。 第1は、土地利用型農業の最重要課題は担い手政策であると位置づけ、土地利用型農業の担い手政策を「担い手政策」と「農地政策」の両政策に関連させて議論した上で、農地取得の方法と農地取得主体の今後の方向性について明らかにした点である。 第2は、株式会社の農地取得をとくに取り上げ、株式会社の本質である物的3側面を明確にした上で、株式会社の農地取得に対して、否定的な見解を打ち出した点である。 第3は、農業法人の問題の本質は、農業に固有の経済主体が何であるかを明確にした上で、農業に固有の経済主体に農業に固有の法人格を与え、その法人に制度的な優遇措置を講じていくことが望ましいと結論した点である。 第4は、地方公社が農業経営を行う際の問題点について検討し、公益性や公共性の内実について考察を深めた点である。そのとき、併せて、農地保有合理化法人である市町村公社についても私見を提示した。 第5は、法人経営の継続性について検討を行い、農業法人の継続性は、一般にいわれるほど強固なものではないことを明らかにした点である。すなわち、構成員の移動を制限する農業法人においては、株式会社と違って、法人の継続性はいたって弱いものであることを指摘したのである。
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