研究概要 |
本研究はアメリカにおける社会科の成立と発展の基礎を築いた先駆者の一人であるHarold O.Ruggを取り上げ、社会科教育の基本的理論を解明し、社会科の存立の根拠を明らかにすることをねらった。 Rugg(1886-1960)は大学において土木工学を修め大学院では心理学を専攻した。最初シカゴ大学の講師に就任したが、その時学校管理及び統計分析を担当するとともに数学.家政学の研究にも参加した。こうした幅広い背景をもって1920年コロンビア大学ティーチャーズカレッジの附属リンカーンスクールに転じてより社会科カリキュラム構成の研究を始めることになる。当時エリオット,フレクスナーの近代カリキュラム論が展開する中で、「歴史及び市民性育成に関する委員会」の報告書に対する比判を通してRuggは社会科カリキュラムの本質を究明した。それは、社会科カリキュラムにおける教材選択の基準を社会的価値に求め、社会、政治、経済的関係、人々の生活様式、現代の主要な問題を教材として取り上げる。また、カリキュラムの構成は種々の実態調査の結果に基づいて行った。かくして、Ruggは“Sorial Science Panyrhlets"(1921-1923)(1923-1926)及び“Man and his changing Soriety"(全6巻)(1929-1932)を結実させた。本研究の主目的はこれらカリキュラムの内容構成の原理を明らかにすることにあった。両カリキュラム構成の基底は社会の事実についての知識を統合することをねらっている。したがって取り入れている教材は地理、歴史、公民という個別科学ではなく、現代社会の問題である。例えば、「機械と人間の問題」、「移民と都市人口」、「アメリカ文化」等のように総合的問題が取り上げられている。これらの問題をコミュニティの問題として具体的にしかも、地理的、歴史的、政治的に検討し、その解決に導く方法を採用した。本研究では、Ruggの教科書シリーズを検討し、その内容構成の基本にせまった。
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