本年度は昨年度の成果にもとづき、PIN型シリコンダイオードのアレイを用いた宇宙X線撮像デバイスの開発のため、以下のような研究を行った。 (1) 単一のPINダイオード素子を用い、プリアンプの性能向上およびアナログ処理技術の向上をはかった。この結果、常温でも数KeV以上のエネルギー域で安定な動作を実現することができた。光帰還方式も検討を行っている。 (2) 上に述べたシステムを-30℃まで冷却し、温度とエネルギー分解能の相関を調べることにより、雑音に寄与するさまざまな成分の評価と分離を行った。現状ではリーク電流が効いているようである。 (3) 複数個の素子をアレイ状に並べた場合の、効率の良い信号読み出し方式を、いろいろな角度から検討した。一素子ごとにプリアンプを設けて信号処理する方法が最適であるが、処理回路がぼう大になってしまう。これに代わる方法として、プリンアンプ初段のFETのみは一素子ごとに設け、それ以降の信号をマルチプレクス処理する方法を実験的に検討した。また実際の観測を想定したシミュレーションを行った。 (4) 上の場合、ある素子にイベントのあったことを認識し、その素子の位置をエンコードする技術が鍵になると考えられる。 以上のように本年度の研究を通じ、シリコンダイオードアレイを用いたX線撮像デバイスの基礎特性を把握し、技術的問題点を整理し、同時に開発の指針を得ることができた。ただし、時間の都合上、プリアンプの一部を組み込んだ独自のダイオードを試作するまでには至らなかった。
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