まず、ドープしてない純粋のヨウ化セシウム(CsI)が、液体窒素温度では大変効率のよいシンチレータとして作動することが確認された。 つぎに、モリブデン酸鉛の単結晶を冷却して実験を行った。この結果、100K以下ではやはりシンチレータとして使えることが新たに見いだされた。この物質は二重ベータ崩壊核であるモリブデン-100を含んでいるためシンチレータとして使えることがわかったことで二重ベータ崩壊実験の新しい展望をきりひらく可能性がある。われわれはこの結晶の有用性を評価するために、実際に短期の二重ベータ崩壊実験を行ったが、その結果比較的簡単に半減期の下限として8.9×10^<17>年を得ることができた。しかし、実験の感度は結晶中に含まれる放射性の鉛-210が出すバックグラウンド放射線によって制限されていることも明らかになったので、この不純物を減らす対策が必要である。 また、モリブデン酸鉛とよく似た物質であるタングステン酸鉛も同様に100K以下の温度でシンチレータとなることがわかった。
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