研究概要 |
既に測定したP+d散乱の微分断面積、Ay、iTll、T2qの大量のデータを熊本大学武宮氏の3核子Faddeev計算結果と詳細に比較した結果、(1)よく知られたAyピーク付近での約25%の計算と実験の不一致は武宮氏の提唱する2核子間の短距離LS力の増加によって5-10 MeVでほぼなくなるが、2-18 Mevの範囲では未だ不一致が残っている、(2)これまで指摘されていない微分断面積にも、Ayのそれに匹敵する大きな不一致がある、(3)さらにテンソル編極量にも同様の不一致がある、という事実が明らかにされた。これらは現在提唱されている2核子間ポテンシャルのスカラー、ベクトル、テンソル各成分にまだ不備な点があり、改良が必要なことを示している。さらに、幾多の実験上の困難を克服した後、17.5 MeVでd^^→+p→^3He+γのAxx,Ayy,Azzをこれまでより5-10倍精密に測定し終えた。実験データはもっとも信頼のおける石川-笹川の理論計算でも再現されず、3核子力を導入するとさらに不一致が大きくなるという、これまでと異なる結果になった。2核子間力、3核子力、あるいは導入していない反応機構など、原因を追及しているが、いずれにせよ実験データは3核子力の有無およびその性質の検知に必要な精度をもっている。 n^^→+d散乱のAy精密測定の準備を進めた。九州大学タンデム加速器からのd^^→ビームを0.4μAまでに強化し、D(d^^→,n^^→)反応で生成するn^^→ビームのコースを整備し、nビームの発生テスト、シールド材料テスト、測定機器の改良調整を繰り返した。また理化学研究所でもテスト測定を行い、そこでも将来n^^→+d実験が可能であるとの結論を得た。10-18 MeVのn^^→ビームの偏極度をn^^→+^4He散乱を利用して1%以下の精度で決定し、それを用いてn^^→+d散乱のAyを精密に測定するための手法をほぼ確立した。
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