半導体超微粒子において、微粒子サイズや表面に依存する物理現象の観測は、超微粒子の新物性解明にとって不可欠である。ここでは、励起子閉じ込め効果の特異なCuCl超微粒子を選び、特に励起子・格子相互作用の量子サイズ効果に着目した研究を行なった。 1.励起子状態幅の微粒子サイズ依存性及び温度依存性から、励起子・格子相互作用の量子サイズ効果による変化の様子を調べた。サイズの減少とともに励起子と音響型格子振動間の相互作用の顕著な増大が見い出された。 2.レーザー光照射により生じる励起子発光の光疲労効果について、その温度・励起強度・微粒子サイズ依存性を調べた。格子緩和による界面での励起子無輻射遷移中心の生成がこの現象の有力な原因であると結論した。 3.超微粒子における励起子高密度効果と光学非線形性を、発光と吸収の非線形変化の測定を通じて調べた。光学非線形性の大きさが微粒子中の励起子の総数に依存して変化することを見い出し、超輻射現象を引き起こす励起子コヒーレンスとの関連を明かにした。 4.半導体超微粒子を取り囲むマトリックス効果を調べる目的で、NaClマトリックス中とホウケイ酸ガラスマトリックス中の微粒子の光学現象を比較した。界面電子準位、フォノン閉じ込め条件、微粒子形状等の違いが、微粒子系における励起子・格子間相互作用や励起子の量子サイズ効果に大きな影響を与えていることを確認した。 以上得られた知見はいずれもなんらかの形で励起子・格子相互作用が関係する現象であり、この相互作用の量子サイズ効果が、半導体超微粒子の様々な光学的性質に重要な役割を果たしていることが分かった。今後、この研究で得られた成果を基にした研究を更に発展させれば、分子クラスターとバルク結晶との中間相としての半導体超微粒子とその集合体における新物性を、より明確にすることができるものと確信している。
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