研究課題/領域番号 |
03452032
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
兵頭 俊夫 東京大学, 教養学部, 教授 (90012484)
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研究分担者 |
斎藤 晴雄 東京大学, 教養学部, 助手 (60235059)
長嶋 泰之 東京大学, 教養学部, 助手 (60198322)
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キーワード | 陽電子消滅 / ポジトロニウム / PTFE / グラファイト / 表面 / 陽電子寿命 / 自由体積 / 陽電子ビーム |
研究概要 |
本年度は、PTFE(テフロン)中の陽電子寿命スペクトルと陽電子消滅2光子角相関スペクトルの温度依存性の相関関係を詳しく検討した。寿命スペクトル中の、ポジトロニウムによるとされる長寿命2成分の寿命の値が温度とともに増大した。また、2光子角相関スペクトルの、ポジトロニウムに由来するピークは温度とともに幅が狭くなった。これらは、テフロン中の自由空間の半径が温度とともに大きくなるために、そこにトラップされているポジトロニウムの平均零点運動量が小さくなり、一方ピックオフ消滅率は低下すると考えると、半定量的な解釈が可能である。しかし、従来から使われているモデルでは、完全につじつまの合う解釈は得られないこともわかった。 また、可変エネルギー低速陽電子ビームによるグラファイト(HOPG)の中での陽電子寿命データの詳しい解析を行った。その結果、グラファィト表面に陽電子の表面状態が存在することを確認した。また、表面状態の陽電子は、金属表面の場合のように熱ポジトロニウムとして放出されるのではなく、一旦結晶内に戻り、非熱ポジトロニウムとして再放出されると考え、これはグラファイトのエネルギーバンドの異方性のため、熱ポジトロニウム放出にもフォノンの関与が必要であるためであるとの結論を得た。 また、将来の原子炉材料として重要なアルミナ単結晶を中性子照射し、焼鈍によるボイド生成の研究を行った。900Kから1825Kまでの焼鈍でボイドが生成し、成長し、消滅した。ボイド中にはポジトロニウムが生成し、その運動量分布からボイドの半径を推定した。また、焼鈍によって表れる中間的な運動量分布の成分はポジトロニウムに直接関係ないことを確認した。この成分は、ボイド表面へのアルミニウムの析出に関係すると思われる。
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