研究概要 |
本年度は本研究の最終年度に当たる。本年度は、スピンを選別したメタルステーブル原子と固体表面の相互作用(申請課題(1))に焦点を絞った。 具体的には、He^★(1s2s、2^3S)とLaCoO_3を対象とした。LaCoO_3は典型的なペロブスカイト型酸化物であり、電気伝導の点からすれば半導体である。また、他の遷移金属酸化物の場合と同様に一電子近似(バンドモデル)が破綻した系であり、電子相関が重要な役割を果たす。固体の電子相関については、従来、光電子スペクトルに出現するサテライトバンドの解析を通して研究がなされてきた。 本研究において、He^★による放出電子スペクトルを測定した結果、主バンドがほとんど検出できないにもかかわらず、サテライトバンドが極めて強調されて観測された。サテライトバンドの強調現象はかってベンゼン等の気体分子系で見いだされたが、固体では初めてのことである。解釈にはかなりの時間を費やすこととなったが、最終的には電子配置間相互作用として遷移金属原子間の電荷のゆらぎを導入することによって解析することができた(Phys.Rev.Lett.71,4217,1993)。
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