研究概要 |
複数の拮抗する素材を混合して競合凝縮系を合成する場合,試料に生じる巨視的不均質性は避けられない。そのため,これらの系に特徴的な相転移や秩序化のスロ-ダイナミックスについては,信頼性の高にデ-タを得にくいのが実情である。本研究では,結像光学の範囲で均質性の高い試料領域を選択的に捉え,そのデ-タを得ることから,競合系の秩序構造の縮退や緩和機構を解明することを目的としている。主な対象はIsing型希釈混晶であり,その磁化緩和を顕微観察フアラデ-効果で明らかにすべく,本年度は顕微フアラデ-回転装置の製作と,測定対象となる希釈系Fe_<1-x>Mg_xCl_2の育成と光学測定を計画した。本研究の主要備品である光学用超伝導電磁石の装置への実装に時間を費やし,また,顕微鏡システムの配備が予算の都合で,平成4年度に持ち越されたため,当初の装置開発は遅れている。しかし,対象物質の磁化緩和の基礎デ-タについて幾つかを得ることに成功し,国際シンポジウム(第1回東和大学国際シンポジウム1991.11)で表発した。その要旨を以下に報告する。Fe_<1-x>MgxCl_2は非磁性Mg^<2+>の置換とともに,ランダムIsing系に特徴的なランダム磁場効果を示す反強磁性相,スピングラス相が現れる。それぞれの希釈濃度領域に対して,磁化の長期間緩和を測定し,緩和の時間依存性を比較検討した。特にスピングラス領域では,従来から理論的に予測されている緩和関数と相容れない結果が求まり,このような系の緩和機構について考え直す自由度のあることを見出した。この結果の妥当性を更に吟味するために,顕微システムの開発を是非とも推進すべき感触を得た。また,競合系の典型である三角格子反強磁性体RbNicl_3,RbMnBr_3について,光複屈折の実験から磁気相転移に関する幾つかの知見を得たので,欧文誌に発表した。
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