研究概要 |
平成4年度は三角格子反強磁性体の単結晶作成,磁気測定,光学測定ESRおよび中性子回折を行った。磁気測定,光学測定は東工大理学部と共同で行い,ESRはドイツのハーン・マイトナー研究所および東工大理学部と共同で行った。また,中性子回折は東大物性研究所および東北大理学部と共同で行った。主な研究成果は次のようなものである。 1. CsCuCl_3はC軸に沿った長周期螺旋スピン構造をとることが知られているが,我々はこの物質の秩序相でのESRモードを解明した。 2. RbVBr_3はC面内の単位胞がCsNiCl_3のそれに対して√<3>×√<3>倍大きくなっている。この系では理論的に逐次相転移が起こることが予想されている。我々は磁化率とトルク測定によって遂次相転移を確認した。この物質では低温測の転移は一次で中間相は弱強磁性をもつことが分かった 3. 異方性の異なるRbNiCl_3とKNicl_3の混晶を作成し,この系の相図を磁気測定で決定した。Kの濃度を大きくしていくとある濃度で異方性が容易軸型から容易面型に変るが,その点から中間相が顕著に現れることから,この点は多重臨界点であることが分った。 4. RbNiCl_3のスピン波励起を中性子散乱で調べた。スピン波の分散関係は一部古典スピン波近似と合わない所があり,それがハルデン効果を考慮すると説明できることから,この物質はハルデン系の秩序状態にあると結論された。また,ハルデン系ではないCsMnI_3のスピン波分散を調べスピン波理論とよく合うことを確めた。 5. RbVBr_3の磁気構造を中性子回折で決定した。また,この物質のスピン波分散も調べ,交換相互作用の決定も行った。さらにこの物質における構造相転移の秩序変数の温度依存性も測定した。
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