研究概要 |
(1)ランダウ流の相転移論を使って、“副格子歪"、“フェリ歪結晶"、“フェリ弾性体"という新しい概念が定義できることをはじめて示した。さらにこの概念を使うと、従来知られていた硫安型結晶の構造相転移が実は、フェリ歪相転移であることが明らかとなった(発表論文の1). (2)フェリ弾性体の有力な候補結晶として、[N(CH_3)_4CoBr_4、[N(CH_3)_4]_2ZnBr_4、[N(CH_3)_4]_2MnBr_4の単結晶を蒸発法および回転徐冷法により育成した。 (3)[N(CH_3)_4]_2CoBr_4の単結晶を使って、誘電率ε(T)を370Kから10Kまでの広い温度範囲にわたって測定した.その結果、a,b,cの3つの軸方向では、それぞれ特有の温度依存性を示すことを見出した。さらに、この実験結果は、この結晶のオ-ダ-パラメ-タが2つあり、それぞれの温度依存性がちがうというフェリ歪結晶のモデルを使うと合理的に説明できることがわかった(発表論文の2). (4)画像記録・処理装置(偏光顕微鏡、ビデオカメラ、ビデオレコ-ダ、パソコン)をシステムとして作成した.これを用いて、[N(CH_3)_4]_2ZnBr_4単結晶について、相転移にともなうドメイン構造の変化を観察した。その結果、単斜晶角βの90°からのずれΔβ=90°-βガゼロになる温度Tzにおいて、直線状のドメインウォ-ルは変化しないが、直角状のドメインウォ-ルは明暗が逆転することを見出した(1992年春の物理学会で発表予定)。 (5)X線4軸回折計を用いて、[N(CH_3)_4]_2CoBr_4単結晶の回折デ-タを測定した.その結果、室温においては、4面体基は無秩序状態にあることがわかった。現在、転移点Tc以下における構造解析を行っているところである(1992年に春の物理学会で発表予定)。
|