(1) ランダウの相転移論を用いて、「副格子歪」、「フェリ歪結晶」、「フェリ弾性体」という新しい概念が定義できることをはじめて示した(論文1)。 (2) [N(CH_3)_4]_2CoBr_4の単結晶を作成し、誘電率を(T)を10Kから370Kまでの広い温度範囲にわたって測定し、従来の強弾性体にはみられない特豊なふるまいを見出した。この結果を解析したところ、この結晶は、「フェリ 歪結晶」であると結論された(論文2)。 (3) [N(CH_3)_4]_2CoBr_4のN原子の代りに、P電子を置換した[P(CH_3)_4]_2CoBr_4の単結晶を作成し、相転移の様子をしらべた。その結果、P原子を含む結晶では、転移点Tcが80Kも増加し、転移は1次転移になり、単斜晶角βの90°からのずれΔβ=β-90は常に負の値をとり、符号が逆転することはないことがわかった。これから[A(CH_3)_4]_2XBr_4型結晶のフェリ歪相転移では、陽イオンA(CH_3)_4^+が重要であり、陰イオンXBr_4^-は重要でないことが明らかとなった(論文5)。 (4) [N(CH_3)_4]_2ZnBr_4単結晶のドメインパターンを偏光顕微鏡で観察し、画像記録・処理装置を用いて解析した。その結果、単斜晶角βがちょうど90になる温度Tzにおいて、aドメインは消えるようなことはなく、Tzの上下と全く変らないことがわかった。さらにac直角デメインは、Tzで明暗が逆転することを見つけた。これはTzを直接にみた始めての実験である(論文6)。 (5) 我々の3年間の結果は、国内における物理学会だけでなく、フランスで開かれた「ドメインに関する国際会議」では招待講演として発表した。さらにアメリカで開かれた「強誘電体国際会議」でも発表し、各国研究者の大きな関心をよんだ。 (6) フェリ弾性体の研究分野は今後ますます重要になると期待している。
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