平成3年度の研究では、α-(BEDT-TTF)_2I_3の金属-絶縁体転移(135K)近傍で高周波電気伝導度の測定を詳細に行い、相転移が起こる直上の温度域で、電気伝導度の異方性に異常があらわれることを発見した。高周波電場が結晶のある軸(a-軸)の方向にかかっている場合には、電気伝導度は転移温度の上下で単調に変化するが、別の方向(b-軸方向)の電場に対しては伝導度が転移温度直上で一旦上昇するという異常を発見したのである。 今年度は、高周波電気伝導度の測定を続けると同時に、直流電気伝導度の測定を行って、高周波領域でみられる電気伝導の異常に周波数依存性があるかどうかを調べた。そのために、モンゴメリー法と呼ばれる電気伝導度測定法を採用した。金属-絶縁体転移温度前後でa-軸、b-軸方向の電気伝導度を同時に詳細に測定した。 その結果、転移温度直上における電気伝導度の異方性の異常は周波数には依存せず、直流伝導度にもあられることが明らかになった。更に、この物質の金属-非金属転移が単純でないことがわかった。すなわち、絶縁体転移温度の約0.5K程したの温度で、電気伝導度の異方性が変化する現象が見つかったのである。 二番目に、圧力印加をした状態における金属-絶縁体転移の研究を行った。この物質の金属-絶縁体転移は圧力を印加する事によって抑制されることがしられている。この時、転移の様子がどう変化するかが興味の対象である。 既に、平成3年度の研究で、高圧力下で絶縁体転移が抑えれれている系に磁場を印加すると絶縁体転移が復活することを見つけていたのであるが、今年度はホール効果の測定を行い、いくつかの新しい知見を得た。第一に、磁場によって誘起された絶縁体相では電荷坦体の濃度が低下していることが明らかになった。第2に、坦体濃度に大きな磁場依存性があることが明らかになった。
|