研究概要 |
1.スピン量子数1をもつ一次元ハイゼンベルグ反強磁性体の代表的物質であるNENPに少量のCuをド-プした単結晶についてESRの測定を行い,二組の超微細構造を観測した。この結果はVBSモデルに基づくフラクショナルスピンと銅の原子核スピンとの相互作用によるとしてうまく説明することができた。 2.NENPに3.3at.%の銅をド-プした単結晶について8Tまでの定常磁場及び40Tまでのパルス磁場中で磁化の測定を行った。磁化は低磁場で急に増加し約4T以上で飽和する。更に磁場を増加すると,不純物を入れないNENPと同じように磁化は磁場に比例して増加する。低磁場の磁化曲線はVBSモデルに基づくフラクショナルスピンと銅の電子スピンの結合系についての計算で定量的に説明出来ることが分かった。高磁場の磁化のふるまいは,ハルデンギャップの消失によるとして説明出来る。 3.交換相互作用が競合する一次元量子スピン系の候補物質として,SrCuO_2(スピン1/2)及びBaNiO_2(スピン1)を見つけ,帯磁率及びESRの測定を行った。両物質とも帯磁率は300K以下で常磁性帯磁率から予想される値と比べて非常に小さい。約30K以下で温度の低下に伴って帯磁率は増加する。BaNiO_2の場合は単結晶作製に成功したので,それについて帯磁率を測定したところ顕著な異示性は見られなかった。ESR測定で弱いシグナルが観測され,これは通常の常磁性共鳴としては説明できない。これらの実験より,上記二物質においては交換相互作用の競合による量子効果が現れているようである。
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