1.スピン量子数1をもつ一次元ハイゼンベルグ反強磁性(本TMNIN及びNINAZについて超強磁場中で磁化測定を行い、ある磁場以上で磁化が急に出現することを見出した。この結果は以前に勝又達が報告したNENPの場合と同様なものであり、TMNINとNINAZにおいてもハルデンギャップが存在することが実験的に証明された。 2.通常の方法よりも早い時間で成長させたNENP単結晶について、ESR測定を行ったところ、以前にNENPに少量の銅イオンを導入した場合に得られたものと類似のシグナルが観測された。この結果は結晶中に有限の長さの一次元鎖が存在し、その端にスピン1/2自由度が出現するというモデルでうまく説明されることが分かった。この試料についての帯磁率測定の結果も同じモデルで説明され、以前のNENP・(uの結果と合わせ)、一次元鎖の端に出現する半端なスピンの存在が実験的に明らかになった。 3.0.1at%の銅を含むNENP単結晶についてESR測定を行い、超微細構造を見つけた。この物質では超微細相互作用定数が二種類あること及び異方性がかなり大きいことが分かった。銅とNENP中のニッケルのスピンは弱く結合することより、上述の有限〓が実現され端に出現するスピン1/2自由度と銅スピンが相互作用し、銅スピンと銅の核スピンが超微細相互作用するモデルが考えられる。このモデルハミルトニアンを正確に解くことにより実験結果をうまく説明することが出来た。更に、超微細相互作用定数の異方性についても結晶場理論に基ずく計算を行ったところうまく説明することが出来た。以上1〜3の結果について論文として発表した。
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