研究課題/領域番号 |
03452049
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
壽榮松 宏仁 東京大学, 理学部, 教授 (70013513)
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研究分担者 |
村上 洋一 東京大学, 理学部, 助手 (60190899)
池田 宏信 高エネルギー物理学研究所, 教授 (90013523)
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キーワード | モノレイヤ- / 酸素分子膜 / 磁気相転移 / 2次元磁性体 / 三角格子反強磁性体 |
研究概要 |
黒鉛表面上の酸素分子モノレイヤ-結晶は、高密度相εおよび低密度相δの2つの固体相が存在し、共に低温でスピンS=1の反強磁性的秩序を持つと考えられている。この系の最大の特徴は、原子サイズで純粋な2次元(2D)反強磁性体が得られることであり、2Dスピン系の安定性及び揺らぎの研究に理想的なモデルとなることである。最近、我々は、詳細な高感度磁化率測定から、2D三角格子を基本とする高密度ε相において反強磁性転移による磁化率異常を初めて観測し、低温秩序相εの磁化率が2D反強磁性体の理論では理解できない温度依存性を持つこと、高温相ζは単なる常磁性ではなく強い反強磁性的短距離秩序を持つ相であること、このε-ζ磁気相転移には、酸素の第1層は関与するが、第2層目は寄与していないこと等を明らかにした。 本研究は、中性子回折によって、この磁気相転移に関するスピン構造およびその動的性質を解明することを目的とした。高エネルギ-研ブ-スタ-施設KENSの回折装置MRPを使用し、以下の結果を得た。 (1)酸素モノレイヤ-の低温相で、核格子の2倍の周期を持つ磁気散乱反射を観測し、この磁気秩序相が反強磁性スピン配列を持つことを明らかにした。信頼性のある初めての実験結果である。 (2)磁気散乱強度は、転移点で大きな不連続変化を示し、この磁気転移が1次転移であることを初めて明らかにした。さらに、その温度変化は、X線回折実験による格子歪の温度依存性に極めて類似しており、この相転移が強い格子ースピン相互作用の結果生じたものであることを示している。
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