研究概要 |
前年度において,市販半導体レーザーに反射防止膜をコートして,外部共振器を構成し,モード同期発振させることによって,パルス幅10ps,エネルギー10pJ,繰り返し周波数100MHzの超短光パルスを得た。本年度は,これをQスイッチYAGレーザーの第2高調波で励起した色素セルで,増幅することを試みた。QスイッチYAGレーザーの繰り返し周波数は約1Hzであり、半導体レーザーの超短光パルスと,同期をとるための,周期回路を製作した。増幅用色素セルからのASEが,半導体レーザー素子を破壊することを防止するために,光アイソレーターを使用した。パルス幅30ps,パルスエネルギー10pJの半導体レーザーパルスを,約30mJのQスイッチYAGレーザーの第2高調波パルスで,アセトン中のLDS765色素セルを励起することによって,1段増幅約10^6倍の増幅度が得られた。 増幅後の光パルスのパルス幅は約40ps,パルスエネルギーは約40pJであった。 ただし,増幅度が不安定でショットごとのバラツキが大きかったので,QスイッチYAGレーザーの第2高調波による励起光を2つの増幅用色素セルに分けた2段増幅を試みたが,今のところ改善はみられていない。以上まだ不満足な点も残るが,半導体レーザーを用いた簡便な方法で,超短光パルスを得る方法が確立された。 一方前年度に引きつづき,光半導体素子を用いたインコヒーレント光フォトンエコーの実験も継続して行い,本年度は非レーザー光(通常の発光ダイオード)ではじめてフォトンエコーの観測に成功した。非レーザー光源では,スペクトル幅の広い光源が容易に得られ,極めて高い時間分解能が期待されるとともに,レーザー光が得難い波長域への,フォトンエコーの拡張が可能となる。
|