研究概要 |
本研究は千島弧と東北弧の接合部における地殻変動の特異性および太平洋プレートが東北日本へ及ぼす影響の違いを明らかにすることを目的に計画された.この目的を達成するために(1)GPS広域観測網の整備と繰り辺し観測を行うとともに(2)時間分解能をあげるためにGPS連続観測システムの稼働試験を実施した.また(3)GPS測位の精度を支配する大きな要因である大気遅延量補正の問題についても研究を進めた. GPS観測網は広域観測網の構築を目指して観測点の設置を行った.また,地震予知や火山噴火予知研究も視野にいれ,いくつかの地域には密に観測点を展開した.これらの観測点では2〜4週間にわたる観測を繰り返し観測網の精度が100〜300kmの基線長に対して1〜2cmであることを確認した.この観測網は1993年7月に発生した北海道南西沖地震に伴う地殻変動を捕らえた.さらに,この地震の発生直後には奥尻島および渡島大島に連続観測点を新設し,この地震に伴う余効変動を追跡することに成功した. 連続観測は東北日本に展開されている観測点を用いて実施され,基線長変化が高い時間分解能で検出できることを確認した.また,GPS連続観測がプレート間の相対運動のみならずプレート内変形による地殻変動を観測するために有効な手法であることも確かめられた. 大気遅延量補正については気象予報モデルを用いた新しい補正法を開発した.この研究を進めるなかでGPS高密度観測が対流圏内における水蒸気分布の見積もりにも利用できることが分かり,GPSの新たな利用法への道を開いた. 本研究で設置した観測網は,この研究の終了後に発生した1994年北海道東方沖地震および1994年三陸はるか沖地震に伴う広域的な地殻変動を捕らえた.特に連続観測は三陸はるか沖地震に伴う地震時変動ならびに余効変動が見事に追跡された.
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